REPORT:Startup Weekend Fukuoka 2012

REPORT:Startup Weekend Fukuoka 2012

この記事は、Startup Weekend Fukuoka 2012のオーガナイザーを勤めた松岡謙治さんより、寄稿いただきました。

松岡謙治
世の中のいろんな機械がプログラム出来ると良いなと思う日々。
WebプログラムやAndroidプログラムが好物。GDG九州のマネージャー。
http://firespeed.org/


StartupWeekendって?
StartupWeekendを一言でにまとめると「54時間起業を体験する」イベントです。金曜日の夜に集まり、チームを作り土日でビジネスにしてそれをお披露目します。耐久Hackathonとは違い、継続可能であることが重視されHackathonではまず聞くことがない「マネタイズ」が重要です。「マネタイズ?」なんだか汚そう そう思っていた時期が私にもありました。けれど、このイベントに参加して「マネタイズ」の本当の意味がわかりました。

チーム決め
初日はパーティーから始まります。これから始まる短く長いイベントのためにお互いを知り合う大事な時間です。ビールを飲みながら軽いゲームをします。ランダムな単語の中から2つを選んで「5分で」サービスを考えます。私達のチームが選んだのは「アメージング」と「ピザ」。これをどうやってビジネスとしてまとめるか?アイディアありきではなく、単語ありきでサービスをひねり出します。

まるでカオスな中からやけくそで意見を出していくと、その意見を他の人が叩いたり伸ばしたりしてわずか五分でそれっぽいビジネスプランに育っていくのを味わうことができます。このイベントが個人戦ではなくてチーム戦で自分の力が足りない部分は他の人が補ってくれることに気が付きます。

パーティーとゲームで参加者が和んだらいよいよ本番が始まり
ピッチが始まります。各自この週末に作りたいビジネスを60秒で発表します。この時にはPowerpointもKeynoteも使えません。体一つで発表する必要があります。様々なアイディアが出ますが、決選投票に残るのは上位5チームだけです。ここで残らないということはアイディアがまずいか、アイディアを説明する方法がマズイということ、それでは実際の起業でも良い仲間を見つけることが出来ないというわけです。

上位5チームが決定したらアイディアを出した人含めて自分が参加するチームを決めます。ここでのリーダーはまるで求人活動のようです。 自分がほしいスキルを持った人をくどいて回る必要があります。最小チーム人数は2人ですが、少なすぎるとマンパワーが足りなくなるし、多すぎるとチーム運営が困難になります。経験上5〜8人くらいが良いようです。

チームは多種多様なスキルを持った人が必要です。プロジェクトをまとめる人、折衝をする人、プログラマー、デザイナー、マーケター。スキルと人数の問題のため「いつもの勉強会にいるメンバー以外」と組むことになります。各自の役割分担とスケジュールを決めたら初日は終了です。

外に聞きに行く
2日目はいよいよプロジェクトの本格始動です。朝食を食べながら何を作るかを1時間ほどで決めたらイベント会場の外へ、作ろうと思っているサービスの需要があるかインタビューに行きます。これはかなりしんどい。街行く人から意見を聞くって普段しないですよね。そのため、まずは誰に何をどうやって聞くかを考えます。私達のチームは近くの公園でイベントが行われていたのでそこに行き、ターゲットになりそうな人に話を聞くようにしました。すると当初有るだろうと思っていた需要があんまりなかったり、もっと良いアイディアが出てきたりしました。そう言えばカナダに行った時お店の人が良く話しかけてくれて、サービスの感想を事細かく聞いていた。その時、日本はカナダに比べて開発者と街の人が遠いなと思ったのですが、気がつくと自分も今まで街の人にリサーチをかける事って無かったです。

街の人は思ったよりは親身に話してくれる人が多く有意義で、自分の中で勝手に「出来ない」って決めつけていたことに気がつきました。某メーカーさんも誰が買うか分からないような商品を出す前に市場調査をして欲しいです。

一旦会場に戻ってリサーチの内容を元に最初のアイディアを練り直します。この時点で各自、発案者のアイディアではなく、自分たちなりに考えた完成図が出来ています。リサーチで得られた情報から自分達が作ろうとしていたものが変わっていくのを感じます。この方針転換も普通のイベントではあまり味わうことがない経験。発案者自身も当初は名刺を置き換えることを考えていましたが、名刺を補完するサービスへと変更されることになりました。このイベントで最終的に何を作るかは発案者であっても想像不可能なのです。

そして、方向性が再度決まって開発スタート。コアとしてやるべき部分を決めて作りながら同時に周辺のアイディアを固めていきます。この時点ですでに2日目昼過ぎ。少ない時間で完成度をあげるためには、不要なものを削り必要最小限モデルを探す必要があります。けれど、機能が最小限じゃだめで、そこにビジネスプランが存在する必要があります。ここでまた、各自の完成像を曲げて行かなければいけません。本当に驚くほど時間が足りません。

今回はオーガナイザーとしての参加だったので意見を控えめにして会わせていこうと決めていたのですが時にヒートアップしてしまいます。

そしてプレゼンへ
始まる時は長く感じていても、気がつくとあっという間の最終日です。そして最終日、サービスを作る時間はほとんどありません。プレゼンチームと、実装チームに分かれて居ましたが、午後はチーム全体でプレゼンに全力を振り分けることにします。発表時間は5分間と普通のLTと同じですがサービスとしての魅力の部分や実現性、マネタイズまで話すことを考えるととても短い。プレゼン資料作成を担当したのですが発表者が実装チームにいたため午前中あまり情報の交換ができず、いざ発表者と付きあわせてみると調整が多くなかなか発表の練習に入れないという事態に・・・。そして直前までプレゼンの練習がうまくいかないままプレゼンを行うことになりました。

プレゼンはそれまでの練習とは比べ物にならないほど良い物になりました。正直これは優勝したのでは?と思いました。しかし、結果はというと、参加者同士の投票ではもっとも得票したけれど、審査員の診断では3位圏外。結局マネタイズ部分が弱かったこと、顧客確保方法が不明確だったことが敗因だったようです。実はこのサービスマネタイズ部分も、顧客確保方法も具体的な方法が出来ていました。けれども5分の発表と3分の質疑応答ではそれを盛り込むことが出来なかった。どんなに良い物もきちんと伝えられないと無意味ということ、それでは忙しい投資家に話を聞いてもらうことは出来ないし、開発者を集められないからサービスを立ち上げることが出来ない。
Hackathonではなくてスタートアップウィークエンドならではの厳しさ。一番大事なのはサービスの内容ではなくて、ソレを納得させ実現させること。

イベントを終えて
このイベントでマネタイズの考え方が変わりました。今までアイディアを汚す物のように思っていたけれど、そうじゃない。
アイディアを実現するにはいろんなお金が必要。お金を稼ぐための「マネタイズ」ではなく、アイディアを実現するための「マネタイズ」もあるのだということに気づきました。そしてこのイベントが面白いのは個人技ではなくてチーム戦でアイディアを持ち込んだ人が考えもしなかったサービスに変わっていくこと。前回に比べておとなしい現実的なサービスが多かったという感はありますが、それゆえに意見がブレやすくその中でサービスが育って2日半前までは存在しなかったアイディアが現実的になっていくのが本当に面白い。StartupWeekendでは挫折だらけです。優勝チームですらサービスが実際にリリースまで至るのはとても珍しい。けれどこのイベントはゲームなので挫折を自由に味わえます。他のスキルセットの人と出会えることも楽しい。自分が全てをやらなくても、代わりの人に助けて貰うことが出来ます。そうして助けて貰いながら本当にサービスを作るときにも誰に相談したら良いかが見えてきます

このイベントは起業家のためのイベントと言われているけれど、会社は社員の研修代わりにして若手のメンバーを送り込んでほしい。きっと眼の色が変わって帰ってくるはずです。