圧倒的なニャンコドリブン谷口 紗喜子〜特集:福岡スタートアップカルチャーが産んだ次世代②〜

圧倒的なニャンコドリブン谷口 紗喜子〜特集:福岡スタートアップカルチャーが産んだ次世代②〜
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福岡市の中心には、官民共働のスタートアップ創業支援施設FUKUOKA GROWTH NEXTがある。入居企業から、全国展開に向け活動を広げるスタートアップが続々と産まれている。

福岡スタートアップカルチャーが産んだ次世代特集では、福岡スタートアップで活躍する若手メンバーにスポットを当て、彼ら彼女らは何を考えスタートアップで挑戦を決めたのか? そして、この先の未来をどのように見据えているのか? を探っていく。

第二回目は、FUKUOKA GROWTH NEXTの入居企業の一つnyans(ニャンズ)代表の谷口 紗喜子氏にお話しを伺う。nyansは、飼い猫のためのサービス「NYATCHING(ニャッチング)」を展開するスタートアップだ。昨年サービス拡大のため、福岡を飛び出し活動の場を東京に移した。

猫を飼って、預け先に困り果てた会社員時代


飼い猫のためのサービス「NYATCHING」はなぜ産まれたんでしょうか?

私たちは「街中の猫はみんなで見守ろう」というテーマをもって活動しています。猫を飼う人にとって、旅行や出張の時に猫の預け先って困るんですよね。猫は環境移動を嫌がるので、ペットホテルは猫にとってストレスになるんです。特にホテルで知らないわんちゃんが、まわりでワンワンと鳴くのも猫にとってストレスですね。

それが嫌だからペットシッターに来てもらうという選択肢もあるんですが、ペットシッターは個人で開業している方が多くて、ホームページも乱立しています。繁忙期にはやっと連絡がつながっても「忙しくて無理だ」と言われるケースもあります。

そんな背景があり、猫を飼っている人は外出や出張、旅行に行く時に毎回預け先に困ってしまうので、結果「行かない」という選択肢をする人が多くいらっしゃるんです。

私も猫を飼っているので、預け先に困り果てていて、どうしたら解決できるのか考えた時に、「近所の猫の飼い主さん同士が友達になって、お世話し合える関係性を作っていたら、いざという時にお世話をお願いできる」と考えたんです。

それで飼い主さん同士をマッチングしてお互い助け合える、お世話し合える関係性を作れるサービス「NYATCHING」を創りました。


ユーザーについて教えていただけますか?

全国展開をしていますが、東京が圧倒的に多いです。福岡は、2番めにユーザーがいます。福岡からスタートしたサービスなのですが、東京33%で福岡が12%、その次が神奈川8%と続きますので、福岡はかなり頑張っています。

福岡でのPRにも力を入れていて、昨年は「猫祭り」を開催しました。FUKUOKA GROWTH NEXTで開催し、半日で400名を超える方にご来場いただきました。福岡のローカルテレビ局にも取り上げていただいたんですよ。本社が福岡にあるので、ユーザーの方にとって親近感があるのかもしれません。

ユーザーは40代、50代の女性が中心です。世帯は取っていないのですが、一人暮らしの方が多い印象ですね。


いつからサービスを開始されたんですか?ビジネスモデルについても教えてください。

昨年の2月の時点で全国展開しました。同じサービスを展開する会社は国内にはないんです。犬はいっぱいあるんですが。日本は営利目的では資格をもっていない方の猫の預かりができないんです。なのでお世話料金に課金するビジネスモデルには向かなくて。

ビジネスモデルは中間マージンを取るのではなく、会費制のように最初に料金を取るモデルをイギリスの事例を参考に考えました。海外のサービスを参考にすることは多いです。中国って猫が犬の2倍飼われている国なんですよ。イギリスは犬のサービスがすごいんです。

今は無料ですべてできるサービスですが、ゆくゆくは有料化していきます。お金のやりくりは資金調達した資金と、地道なイベント運営の収益。後は節約でやりくりしていますね。

起業に欠かせないのは、人の支え


サービスを考えてすぐ起業したんですか?

サービスを考えて半年くらいは会社を辞められなかったので、辞めてそこから3ヶ月くらいのブランクの後、登記しました。前職のリクルートの同期が登記手続きを手伝ってくれたり、まわりに手伝ってくれる方は常に居ました。

当時は、LINE@(サービス提供側とお客様をつなぐツール)で猫の飼い主のコミュニティを創ろうとしていました。猫の飼い主向けマンションで一部屋づつピンポンしていましたね。実は私もそのマンションに後々住みました。

協力者の学生5人と一緒にピンポンして「猫の飼い主さん使ってください」と言って回っていました。ビラまきもやっていましたね。

最初の頃は、いったんマッチングをしてみたかったんです。その時のピンポンから、お客様との出会いがあり、その方に今でも利用者としてTVや記事の取材に出ていただいています。当時を振り返って、そもそも私自身がユーザーなので、そんなことをしなくても良かったんだなと思いますね(笑)

ピンポンやチラシが大変過ぎてらちがあかないので、LP(事前登録を行うサービス概要ページ)をつくってユーザーに登録してもらおうという流れになりました。確か最初の資金調達はそのタイミングだったと思います。

九大の学生さんに手伝っていただいたり、当時席を貸していただいていたIT会社さんのエンジニアの方にも手伝っていただいていました。


さまざまなメディアに取り上げられていらっしゃいますが、サービスが注目されたきっかけは何だったんですか?

Twitterでバズってトレンド入りしたのがきっかけだったと思います。NYATCHINGの登録自体は600~700名くらい入りました。

ホリエモン(堀江貴文氏)がツイートして一気に広がった感覚はありましたね。バズった後にメディアの取材をいただきました。日経新聞さんはサービスをローンチしてから取り上げていただきましたね。

「ニャンニャンニャンの日、2月22日に株式会社ニャンズがニャッチングをリリースしました」ってとても印象に残りませんか?2月22日(ニャンニャンニャンの日)は、私が徹底的にこだわってやっていました。

翌年からは猫の日は他社も狙うようになり、ハードルが上がりましたね。サントリーさんもやられていました。

カッコイイでは続かない


起業を考えている若い方へメッセージをいただけますか?

やりたい、今これが創りたいという考えを持っている方であれば「やれば」と声をかけてあげたいです。よく起業したいからという方もいらっしゃいますが、「しなくて良いんじゃない」と思います。続かないと思うんです。このサービスを創りたいからか、すごく儲けたいからという考えなら続くと思います。創りたいものがあるなら大変でも乗り越えられる。

逆に、起業がカッコイイと思ってやるのであれば、続かないし、人に迷惑をかけるのでやらない方が良いと思います。

私は猫のことだと一生考えていられます。これが犬だと続かないと思うんです。前世が猫かもしれないですね。どれだけ疲れていても、気づいたら猫の画像を見てるんですよね。何かあっても、猫でどうにかしたいと思ってしまいます。自分が病気かなって思うくらい猫が好きなんです。

それに、猫っていうコンテンツが面白いと思っています。何より可愛いし。

自分が面白いと思っているサービスを創るのは面白いです。若いからというメリットは、体力面で有利だと思います。他に、守る物が多くなってくると、リスクを色々と考えてしまって悪影響になることもあるので、守る物がない時にやるのは良いと思いますね。

自分の人生で守りに入ると、決断に迷いが生じることもあると考えていて。純粋にビジネスとしてこうした方が良いという判断ができなくなったり、ノイズが入ったりするんじゃないかと。

起業は積み上げたものをなくすのが怖い人ほど苦労すると思うし、しんどいと思います。
私はチェルシー(谷口氏の飼い猫であり、nyans代表取締猫)しか守るべきものはないので。他はどうでも良いと思っています。

目指すのは街全体が猫を見守る優しい世界


最後に谷口さんが見据えるNYATCHINGの広がる未来について、お願いします。

「猫を飼うと家族が増える」という感覚を味わってもらいたいですね。親族関係が増えるというような感覚です。猫一匹いるとそこから広がる家族関係が増えていって、全員で猫を見守ってあげようという優しい世界が広がっていけば良いと願っています。病気などでどうしても猫を飼えなくなった時に、NYATCHINGがあると思い出してもらえるサービスにもなりたいですね。

安心できる仲間とみんなで猫ちゃんを見守ろう、野良猫も含めて街中が猫を温かく見守ろうという街が広がる世界を目指していきたいです。

先月から、世界的に有名な猫のミュージカル「CATS(キャッツ)」の映画が公開され、人気を集めている。映画のラストでは「猫への敬意」をというメッセージが込められた。国内でもここ数年猫の飼育数が増加し、猫の気持ちによりそうサービスへのニーズはますます増してくるだろう。

もうすぐ、最高のニャンコイヤーの猫の日「ニャオニャオ、ニャンニャンニャン(2020年2月22日)」を迎える。今後のnyansの展開に目が離せない。明星和楽では、福岡の未来のスタートアップを牽引する若手世代を今後も特集していく。