数学というより化学かもしれない。ある数に別の数をかけると別の数になるのだけど、数が大きくなるか小さくなるかの変化でしかない。一方、理科室では。数種の物質をかけ合わせると、まったく別の物質が生成される。そういえば、「時をかける少女」も、はじまりは理科室だったっけ。(「かける」という言葉をかける高次元なダジャレの生成だ!)kakezan vol.1の会場となるcafe galleriaに入った瞬間、化学反応の予感に気分が高揚するのを感じた。
6月15日。梅雨入りしたものの雨の降らない福岡市。『design ×「過去と未来」』をテーマに5人のkakezanメンバーと、九州のクリエーターとのプレゼンテーションおよびトークセッション「kakezan vol.1 in fukuoka」が開催された。イベントの様子を写真で振り返る。
開場してからも途切れない長蛇の列。80名の定員はすでに埋まっていそうだ。会場のcafe galleriaは立ち見が出るほどの大盛況となった。僕はまだ宙を飛べないでいるので、店内での移動は困難を極めた。
kakezanメンバー揃い踏み。全員が白いシャツを着用している。白いシャツを着てきてしまった一般参加者はちょっと気まずい思いをしたかもしれない。しかし、それも含めてカケザンだと思う。ちょっと何を言っているかわからない。
第一セッションはkakezanメンバーによる実績紹介。鎌田貴史氏のユニクロカレンダーや阿南圭吾氏のイッセイミヤケのWebサイトにはじまり、次々と飛び出す活動実績。紹介だけで持ち時間を大幅にオーバーするほどで、司会を務めた上月大輔氏もドギマギしていたのではないだろうか。
事例紹介だけでなく、サウンドデザイナーの小野雄紀氏はデザインにおける制作のヒントを提示した。アートディレクターの齋藤順一氏は「ヒントはWebではなくリアルにある」「ライスワークはしなくていい」などアドバイスを交えつつ自身の経験談を語った。
小ネタを散りばめたFlashアニメーションによるプレゼンテーションを行った戸田芳裕氏。関西弁とそのキャラで会場を爆笑の渦に巻き込んだ。ずるい。
kakezanオフィシャルスポンサーであるcloudpack後藤和貴氏によるプレゼン。本イベントとクラウドテクノロジーとの親和性はというと疑問があるものの、よく知っているキャンペーの裏側でクラウドがどう活用されているかという事例に、参加者たちは興味深そうに耳を傾けていた。
第二セッション。スペシャルゲスト、ミスチルなどのPVを手がける映像監督の丹下紘希氏が登壇。オーラがすごい。こちらもオーラを高めて身構えていなければ、一瞬にして焼き尽くされてしまいそうなトークショーとなった。
ひとつひとつの作品、そして言葉のひとつひとつに深みがある。思わず泣いてしまう参加者も。感想を聞かれたkakezanメンバーさえも圧倒されて言葉に詰まっている様子がうかがえた。
最後は、「未来への手紙」で締めくくった。胸に突き刺さるこれは何だろうか。まわりを見渡すと、みな同様に「何か」を感じている空気だ。「視点を変えるだけでもデザインであり芸術である」とし、「すべての人が芸術家である世界」を思い描く丹下氏の言葉は、参加者への宿題となったように思える。
うってかわって、映像ディレクターむらかみひろし氏のポップな作品。ベクターイメージのベジェ曲線を動かしながらアニメーションをつくるという地道な工程を経て、アナログ感あふれる独自の世界観を持った作品が生まれている。
第三セッションは、kakezanメンバー、丹下氏、むらかみ氏に加えて、九州のクリエーター下村晋一氏、田上公雅氏、小林洋平氏を交えてのトークセッションが行われた。
未体験の仕事の依頼が来たら、どうするか?と言った質問から、最近見かけた変なおっさんを教えて下さい!と言う質問まで様々な質問が飛び交った。中でも注目すべきは、地方での働き方に関する質問だろう。熊本でもいいんだという結論に至った小林氏。東京と福岡では違うことをやっている感じがするという下村氏。
丹下氏は「東京には東京でなければならないという呪縛がある。福岡でしかできないこともある。」と語り、福岡に未来があるとした。
最後にcafe galleriaのオーナーの挨拶。イベントのフライヤーの余りを照明に使うというイベントとのコラボであったり、産地との食のコラボであったりというところを語った。ここでようやく会場がcafe galleriaであることの意味を理解した。
司会の上月氏は、「今後はコミュニティではなく、アソシエーションだと言われている。受け身から能動的への変化であり、今回のイベントが自分への問いかけのきっかけとなればいい。」と締めくくった。
その後、アフターパーティーが開催された。別イベントへの参加のためパーティーには参加せず会場を後にしたが、後日アップされた集合写真を見て、アフターパーティーこそが、登壇者と参加者とがかけ合わされる化学反応の主戦場だったのではないかと感じた。
kakezanは次回も福岡で開催するという噂を聞いている。今回参加できなかった方は、Facebookページなどで次回開催の告知をウォッチしておくといいだろう。僕も次回までに宙を飛んで移動できるようにしておこうと思う。
その他の写真はf365でご覧になれます。
f365 | kakezan vol.1 in fukuoka