「職人×町工場×効率化」ノリノリワークス 〜勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー〜

「職人×町工場×効率化」ノリノリワークス 〜勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー〜
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2019年10月29日・30日に天神・スカラエスパシオで行われた「明星和楽2019」
1日目には「勝手にクリエイティブ大賞2019」が行われました。

明星和楽のテーマ、「異種交創」。

このイベントでは、「異種交創」によって生まれた新しいモノ・コトを発掘することをテーマに、一般の方々やゲスト審査員が“勝手に”エントリー作品をリストアップし、その中から審査を通じて賞が与えられます。

今回の「勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー」では、大賞・優秀賞を受賞した方々にインタビューを行なっていきます。

今回は、優秀賞を受賞した「ノリノリワークス 」代表・乘冨 賢蔵さんにお話を伺いました。

Q. 勝手にクリエイティブ大賞2019の感想を聞かせてください。

職人さんの素晴らしい技術をいろんな方々に認知してもらうために参加しました。工場の泥臭いイメージを変えたいと思っていたので。

あと、かっこいいイベントに出てみたいという動機もありましたね(笑)。

Q. ノリノリワークスの活動内容について教えてください。

私の祖父が創業した乗富鉄工所は水門やポンプなどの水利施設や産業機械を作っています。

「ノリノリワークス」はその乗富鉄工所の新しいブランドです。

私たちのアイデアと職人さんの技術を使って、もっと楽に楽しく働ける機械(からくり道具)を作っています。これまでに3つのからくり道具を作り、いろんな方々に使ってもらっています。

1つ目のからくり道具は「まとめてUFO」

「まとめてUFO」は、重ねたコンテナを一度にまとめて移動させることができるからくり道具です。水産業の水揚げ作業などに使ってもらっています。

2つ目は「まとめてUFO(フォークタイプ)」

1つ目の「まとめてUFO」をパワーアップさせたもので、フォークリフトに取り付けて使うことができます。また、オートロック機能やロックの遠隔解除機能なども搭載しています。

3つ目のからくり道具は「ラクルリン」

重さ40kgの樽を簡単に、楽に移動させることが可能です。また、投入作業の補助もできるので、子どもや女性でも楽に作業することができます。

Q. 作品が生まれたきっかけについて教えてください。

地元の漁師さんから「仕事を楽にする道具を作ってくれないか」と相談されたのが始まりでした。短期間で試作品を作り上げて漁師さんに見せたら好感触で。このスピードで生産できるなら、これは事業になるかもしれないと思いました。

AIやIoTなど大型のシステムや機械を導入して自動化するのが一番良いのはもちろんですが、すべての作業に導入するのは難しいと思っています。最後は人の手が必要な仕事が意外にたくさんあるんですよ。その部分をAIやロボットにするのではなく、効率化・省力化する。ノリノリワークスが今チャレンジしているところはそこですね。

ただ、3つの課題を同時に進めていて、完成に至っていない作品もあります。その中でたまたま上手くいったのが「まとめてUFO」でした。

Q. 新しい企画を考えていく流れについて教えてください。

基本的には、漁師さんや味噌屋さんなどの地元の方々から「こういう仕事を楽にしてほしい」という依頼があります。その後は、職人さんと設計士さんと私で、どういう商品が良いのかを議論して開発です。

商品企画はあえていろんな人を入れて行うように心がけています。私のように知識や形から入る人間もいれば、生粋の職人や遊び人、頑固オヤジな人間もいて(笑)。そういう組織を意図的に作ったというよりは、結果的に多様なメンバーが集まりました。メンバーをまとめたり、メンバーのみんなが考えてくれたアイデアや意見を整理するのがノリノリワークスにおける私の役割です。

また、ノリノリワークスの代表としてイベントなどに参加して活動内容や作品を発信しています。

Q. 新規事業「ノリノリワークス」を始めることができた理由は何だと思いますか?

乗富鉄工所は水門がメインの事業ですが、水門の公共工事が少し減ってきているんですよ。このままじゃないけない、何か新しいことを始めないといけない、そう思ったのがはじまりです。

私はもともと造船所でずっと仕事をやっていました。そこで得た生産技術のノウハウが自分にあったこととうちの工場にすごい腕を持った職人がいること。その2つがあって、試しに商品を作ってみたら成功事例ができました。

何か新しいことをやらなきゃと思っている町工場さんは多いですが、最初の一歩が踏み出せているところはすごく少ない印象です。新規事業にはものすごいエネルギーとお金が必要になります。もし失敗したら、「俺らが儲けたお金で何やってるんだ」と職人さんから不満が出てくるかもしれません。トップが強い意志で「絶対にやるぞ!」と言い切るのが大切だと思っています。

Q. ノリノリワークスや乗富鉄工所、乘冨さんご自身の今後について教えてください。

ノリノリワークスのコンセプトは「仕事を楽に、楽しくしよう」です。「楽に」の部分はクリアしていますが、あとは「楽しくしよう」が今の課題ですね。自分たちは楽しいけど、その楽しさをお客さんに届けられているかは微妙です。

お客さんに楽しさを届けるには、デザインが必要だと思っています。

そこで、今年(2020年)の3月からプロダクトデザイナーを入れて商品開発をしています。まずは、「まとめてUFO」をかっこよくデザインしようかなと。

また、キャンプ好きなメンバーと一緒にキャンプ用品を開発しています。試作品はすでに完成していて、今後の進め方の戦略を練っているところです。

会社としては職人の後継者問題が深刻で。事務職をやりたい方は集まってくるんですが、職人をやりたい方が集まらない。体を使う仕事が敬遠されている印象があります。第一次・二次産業全体に当てはまることですが、これは大きな課題です。

そこで、職人さんの採用活動に力を入れようと考えています。町工場の職人の仕事は単純作業のイメージが大きいですが、実際はそれだけではありません。知識と感性、コミュニケーションも必要です。職人のすごさやかっこよさを知ってもらうことで、若い職人が増えればいいなと思っています。

個人的な目標は、ノリノリワークスを事業として成立させることです。しっかりと売り上げを立て、最終的には億単位の事業を目指します。

また、メンバー全員に勢いがあって、いろんな意見を気軽に言い合える楽しい会社にしていきたいです。

 


乘冨 賢蔵 (のりどみ けんぞう)
柳川市で72年続く鉄工所のアトツギ。
九州大学大学院工学府 海洋システム工学専攻卒業後、横須賀の大手造船所で生産管理に7年間従事。
家業に入ってからは生産管理を行う傍ら、新規事業「ノリノリワークス」を立上げた。
ワクワクする町工場を目指して日々活動中。