「福岡×映画」電気海月のインシデント〜勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー〜

「福岡×映画」電気海月のインシデント〜勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー〜
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2019年10月29日・30日に天神・スカラエスパシオで行われた「明星和楽2019」
1日目には「勝手にクリエイティブ大賞2019」が行われました。

明星和楽のテーマ、「異種交創」。

このイベントでは、「異種交創」によって生まれた新しいモノ・コトを発掘することをテーマに、一般の方々やゲスト審査員が“勝手に”エントリー作品をリストアップし、その中から審査を通じて賞が与えられます。

今回の「勝手にクリエイティブ大賞2019インタビュー」では、大賞・優秀賞を受賞した方々にインタビューを行なっていきます。

今回は、優秀賞を受賞した、映画「電気海月のインシデント」監督・萱野 孝幸さんとプロデューサー・近藤 悟さんにお話を伺いました。

(映画「電気海月のインシデント」のプロデューサー・近藤さん(左)と監督・萱野さん(右))

Q. クリエイティブ大賞の感想を聞かせてください。

萱野:最終ノミネート作品に選ばれてとても驚きました。他の作品は社会性があるので、映画は落選するかなと思っていたんですよね。もっと社会的に定義がある作品がいいんだろうなって。

まあ、電クラにもハッカーを育成したいという社会的な意義や目的はあるんですけどね。電クラを観てくださった方々がTwitterでめちゃくちゃ投稿してくれたのも大きいんですかね。

Q. 映画を作るきっかけや背景を教えてください。

萱野:僕は元々映像関係の仕事をやっていて、仕事とは別に長編の映画を撮ったり。今回の作品は近藤さんに声をかけてもらい、監督としてジョインしました。

近藤:プロデューサーの僕は、子ども向けのプログラミング教室「ITeens Lab」やITのイベント「EXA KIDS」、サイバーセキュリティのスクール「Hackerz Lab」をやっています。プログラミングやハッカー関連の教室やイベントに関わっていると、教育の分野なのですごく真面目なものが多い。そんな中で、周りが面白そうとノッテくれるような、別のアプローチでプログラミングやハッカーの啓蒙がしたいと思いました。

ある日、サイバーセキュリティ財団という一般財団法人から「ハッカー(※)の映画やろうよ!」という声が上がって。そこで、あるイベントで出会った萱野くんに「ハッカーの映画撮りたくない?」と聞いたら、「めっちゃ撮りたいです!」と言ってくれて。すぐに返事をしてくれたので、僕はその勢いでプロデューサーになりました。

でも、プロデューサーについては全然知らなかったので、「プロデューサーって何?」という状態(笑)。プロジェクトが進むにつれて、映画プロデューサーの立ち位置をだんだん理解していきました。

一方、萱野くんはめちゃくちゃ動きが早くて、声をかけて1ヶ月後のミーティングでは脚本とあらすじ作ってくる勢い。

「これは止まれねぇ!」と思いました(笑)。

※コンピューターの情報システムやインターネット全般に精通し、高度な技術を要する問題が起きた際にうまく対処できる人のこと。善意で活動を行うハッカーであるホワイトハッカーと悪意で活動を行うブラックハッカー(クラッカー)に大別される。

Q. 萱野さんは声をかけられて、即OKしたんですか?

萱野:はい、監督は気が楽なので。

近藤:監督も自分でやろうとしたら、プロデューサーもやらなきゃいけない。他人からの依頼だとギャラベース、ある意味リスクがない状態で始めることができます。監督にとっては、依頼が来るっていう状態が結構ラッキーという感覚なんだよね?

萱野:他人様のお金で好きなもの作れるので(笑)。もちろんプロデューサーがすごく頭堅そうだったり、明らかに苦手なジャンルの映画を撮らされる場合は断りますけど。ハッカーものは面白そうだなと思ったので、すぐOKしました。

近藤:この作品作るならこの人だ!と戦略的にやったわけではなく、たまたま近くにいたのが萱野くんだったという感じ。映画は監督で全然違う作風になるので、選択を間違っていたらミスってた気もします。

Q. 制作期間中のモチベーションはどうでしたか?

萱野:「とにかく完成させないといけない!」という気持ちで制作しました。制作期間が短かったし、映画の完成を待ってくれる人がいると思ったので。

近藤:出演者だけでも約100人いるので、スタッフを含めるとかなり規模が大きいよね。

萱野:完成させるまでがゴール。でも、映画完成からがスタートであることは僕も十分承知しているので、なおさら早く完成させたかった。

Q. ロケ地がほとんど福岡ということですが、福岡で撮影することにこだわりはありましたか?

近藤:いろんなインタビューでよく聞かれるけど、そんなにこだわってなかったかな。

萱野:絶対に福岡でロケしたい!というこだわりは特になかったですね。福岡でロケすることが僕たちにとって一番自然。もちろん福岡が盛り上がればいいなと思って福岡にいるわけですけど、福岡の魅力を伝えよう!とは別に考えていませんでした。

近藤:福岡の良さを出すとローカル映画になってしまって、東京など他の地域では身内ノリに映ってしまう。「福岡の良さを伝えたい!」というのはあくまで福岡人のエゴでしかないと思ってて。方言や福岡の観光資源は特に気にせずに映画を撮りました。

Q. 公開したときの反応について教えてください。

萱野:僕がこの映画を作る上で目指したのが、超名作ではなく、普通に面白いエンタメ。
まあ退屈はしないよね、くらいの。ハッカーというニッチなジャンルで、しかもインディーズ映画で、それだけのものを作れたら結構及第点かなと思っていて。でも、いざ公開してみたら、リピートしてくれたりしてて、熱狂してくれる人が意外にいて驚きました。

近藤:公開した最初は自分の周りの知り合いが見にきてくれました。でも、徐々に知り合いじゃない一般のお客さんも増えてきて。

萱野:映画のレビューサイトでも高評価と低評価の論争が始まっていて、嬉しかったです(笑)。

近藤:高評価ばかりだと身内感が出るんですけど、「これは面白い!」「これは面白くない」という人たちが出てくると、この映画は身内の枠を超えたんだなと実感しました。知り合いが友達や同僚を連れてきて、学校や職場で「あれはこうだった」「あの展開はこうだった」と言い合ってるそうで。本当に面白くなかったらそこまでならない。

Q. 電気海月のインシデントの今後について教えてください。

近藤:少なくとも1万人には見て欲しい。そこで、地理的な制約なしに観ることができるように、ネット配信やブルーレイ販売はやろうかなと。エンジニアやハッカー、IT界隈の人はみんな知ってる映画になって欲しいです。

萱野:「ハッカー映画 日本」で検索すると上位になるといいですね。

近藤:ハッカーの映画作るなら、まずは「電気海月のインシデント」観なきゃ!みたいな。僕たちもこの映画を作るにあたって、同じようなジャンルの映画をたくさんチェックしたよね。

あとは、海外の映画祭に出してみたい。英語字幕も一応準備しています。ただ、そこまで手が回ってないのと、言語の問題や海外の権利周りがまだ全然わからない。ハッカーというジャンルは海外ではかなりハマる部分もあると思います。

Q. 個人での今後の活動について教えてください。

萱野:今、別の作品を作っているところなんですけど、今回の作品はハッカーものではないです。今後、映画だけをやるかはわからないですけど、映画は自分のライフワークにはしていきたですね。

近藤:社会課題や面白い課題をクリエイティブに解決する活動はずっとやっていきたい。僕がやっているITeens Labはスクールで、EXAKIDSはイベントで、今回の映画も一種のツール。

萱野:そこは僕たち2人の違う面ですね。映画は僕にとっては目的だけど、近藤さんにとっては手段。

福岡を拠点に映像活動を行う萱野さんが監督、ITやプログラミングの教育を行う近藤さんがプロデューサー。

異色の二人がタッグを組み、制作された映画「電気海月のインシデント」の予告編はこちらからご覧いただけます。(Blu-rayも絶賛発売中)

今後もお二人の活躍から目が離せません。


萱野 孝幸(かやの たかゆき)
映画監督/映像作家
九州大学芸術工学部 画像設計学科卒業。福岡を拠点に実写、グラフィック、インスタレーション等の多ジャンルの制作活動を行う。近年は長編群像劇映画『カランデイバ 』に続き、オリジナルハッカー映画『電気海月のインシデント』(2019年劇場公開)の監督・脚本を務める。


近藤 悟(こんどう さとし)
ロックバンドXanaduを解散後、大学の先輩でもあるメンバーの1人古林と共に起業。
子どもプログラミング教室ITeens Lab(アイティーンズラボ)を立ち上げ2019年現在14教室を運営中。
2017年にはITキッズフェスティバルEXA KIDSを立ち上げ、2018年2019年と開催。述べ約5000人が参加。
2018年にはハッカー映画『電気海月のインシデント』のプロデューサーに就任し、2019年5月に横浜・福岡のイオンシネマにて上映。福岡ではロングラン上映になるなど好評となった。
通称「オレンジの人」