空の御曹司清水淳史 〜特集:福岡スタートアップカルチャーが産んだ次世代〜

空の御曹司清水淳史 〜特集:福岡スタートアップカルチャーが産んだ次世代〜
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グローバル創業都市として勢いを増している福岡市は、日本一創業しやすい街を目指して、行政を含めた創業支援事業を行っている。その流れの中で、福岡を拠点とし、グローバルに拡大を目指すスタートアップが続々と誕生している。

明星和楽は福岡スタートアップで働く若手メンバーにスポットを当て、彼ら彼女らは何を考えスタートアップで挑戦を決めたのか? そして、この先の未来をどのように見据えているのか? を探っていく特集を始める。

第一回目は、世界中の空を利用可能にする上空シェアリングサービス「sora:share(ソラシェア)」を提供するトルビズオン取締役COO清水淳史さんにお話しを伺った。

空の不動産「sora:share」

清水さんの自己紹介とトルビズオンのチームでの役割を教えてください

愛知県出身で、九州大学芸術工学部を休学し事業にフルコミットしています。もともと工学部の土木系の学科だったのですが、2年生に上がるタイミングでデザインの面白さに気づいて、転学しました。

トルビズオンはCEO増本衛とCTO冨田一喜、僕の3名がコアメンバーで、その他に2名の九州大学の学生エンジニア、1名のタイの学生インターン生がいる6名のチームです。社内では経営企画や営業、ファイナンスなどを担当しています。芸術工学部でデザインを学んできたので、デザインの専門分野はもちつつ、それ以外も幅広くこなす形です。

事業の内容について教えていただけますか?

世界中の空を利用可能にするというビジョンを掲げて、sora:shareというドローンの事業を展開しています。世界のドローン市場は長期的には12兆円まで拡大すると試算されていて、僕たちはその内の3,000億円の「空域管理」の市場をターゲットにビジネスをしています。

日本では民法で土地所有者に上空の権利を定めています。土地をお持ちの方は、その土地の上空300メートルまでの所有権を持っているのです。これはつまり、他人の土地上空では無許可にドローンを飛ばすことができないということです。このままでは、米国で構想されているAmazonのドローン宅配やUberのドローンタクシーなどは実現できません。ドローンを活用するには、他人の土地上空を飛ばす許可が必要です。

そこで、僕たちは土地所有者が持っている上空の権利の売買ができるプラットフォーム「sora:share」を作りました。土地所有者はsora:shareへ土地を登録し、その土地をドローンユーザーが利用料を払って飛行する権利を得るという仕組みです(1000円/30分など)。

現時点では、どのくらいのユーザー数と反響があるんですか?

現状は登録ユーザー数は300を超え、100カ所以上の土地が登録され拡大を続けています。活用事例として、今まで人が訪れなかった場所だった佐賀県小城市のダムがsora:shareに登録されたことで、ドローンユーザーが足を運ぶようになり、新たな観光資源としての効果も実証されました。

競合他社と比べて優位性はありますか?

既にsora:shareはスカイドメイン(空間に対して名称を与え、そこにビッグデータを集約して管理する仕組み)において国際特許を取得し、世界を視野に入れて動いています。現状のユーザーはドローンの空撮や練習がメインですが、今後の物流市場の拡大を見越して、今年の2月には広島県の府中市でAEDを運ぶ実証実験や、福岡市の「Fukuoka Smart East(スマートイースト)」で日本初の都市部での目視外飛行の実証実験を行いました。高島市長が実況をしてくださって、NHKをはじめとした各メディアで大きく取り上げていただきました。

現在僕たちは「空の獲得」に特に力を入れています。日本国土の3分の2は森林なのですが、その大部分の管理を担う森林組合と連携して森林上空の登録を進めています。また、ドローン物流の実用化を目指す物流大手セイノーHD と提携し、セイノーHDの保有する国内物流拠点を順次登録中です。

海外への進出も視野に入れ、今年の7月にはタイの省庁の方とお会いし、タイの山間部1,500万平方メートル(面積は福岡市城南区や中央区とほぼ同じ規模)を登録いただきました。

その他には、損保ジャパン日本興亜との共同で開発した “sora:share 保険”や、国や省庁との意見交換といった、足元を固める動きも行なっています。

今後の展開についても教えていただけますか?

これからドローン社会が実現されていく中で、上空数百メートル以上ではドローン専用の空路ができ、飛行機のように土地所有者の許可が不要になると考えられます。その状況下で僕たちはドローンのための空港の役割をもつ「ドローンポート」を各地に配置していく準備を進めています。

スタートアップに進路を決めたきっかけは何だったのですか?

トルビズオンのメンバーに偶然出会ったのがきっかけです。一年半前にSlush Tokyo(世界最大級のスタートアップとテクノロジーの祭典)にボランティアとして参加した際に、現在のCEOの増本とCTOの冨田に出会いアイディア段階のsora:shareのビジョンを聞いて「これは世界を変えるな」と思ったんです。世界を変える事業をゼロから創れる選択肢が目の前に現れたので、迷わず参画を決めました。大学在学中ということでジョインをためらうということは全くなかったですね。

幼少期から夢見た起業の道

なぜスタートアップに興味をもったのですか?

スタートアップに限らず、起業には小さい頃からずっと興味を持っていて、中学校の進路相談の時にもみんなが希望の高校名を言っている中で僕は「アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)に行ってアメリカで起業するんだ」と言っていました。

やっぱり自分がいる世界を自分で良い方向に変えたいみたいという想いは小さい頃からあって、それが中学校の頃の発言にも繋がったのだと思います。

なぜ世界を良い方向に変えたいと思ったのですか?

小さい頃から親に毎年海外旅行に連れて行ってもらっていたんです。オーストラリアやニューヨーク、ロンドン、パリなどさまざまな都市に行き、世界は広いんだと体感していました。世界70億人の内の1人である自分に何ができるのか? 世界の人に届けるにはどうしたら良いのか? という考えが生まれました。そういった海外経験の積み重ねが視野を広げてくれたのだと思いますね。

福岡市がスタートアップに力を入れていると感じることはありましたか?

2年生の時に起業部に入部して以来、スタートアップの流れは感じていました。部のコミュニティの中にも福岡市の方が来てくださったりして、応援されているなと。実証実験も福岡市のサポートがないとできなかったので、ゼロからイチを創るのに福岡は良い場所だと思っています。

事業を続ける中で、大変だったことや、やりがいを感じたことを教えてください。

毎日大変なんですけど、それを楽しんでいます。特に資金調達は大変でした。実際にドローンが飛んでいない中でお金を投資するというのはハードルが高くて、「応援するよ」だとか「すごいね」と言ってくださる方は居ても実際の投資というのは難易度が高く時間がかかりました。直近で資金調達をすることができて、一気に企業価値も上がりました。このスピード感をもって広げていきたいです。また、自分たちのビジョンを説明する中で「それは世界を変えるね」と言われた時や、自分たちの進む道が間違っていなかったんだと証明された時にやりがいを感じますね。

若さの強みはゼロベースの思考

若いからこそのメリット、デメリットはありますか?

僕は若いから頑張っているというところはあります。若いからこそリスクを取ってホームランを狙うことができると思っているので、凄いのは代表の増本だと思っています。彼は二児の父で家庭がありながら挑戦していて本当に凄いです。

ビジネスでのメリットではゼロベースの思考ですね。先入観を持ってしまうような経験がないことで、フラットな視点で色々なことを考えることができると感じます。空の空港を創ろうというアイディアは冨田や自分がゼロベースで事業を考えることができたから出てきたアイディアなんです。

若いからこそのデメリットとしては、良くも悪くも染まりやすいので会社と自分が一体化し過ぎてしまうところですね。会社がどうやったら大きくなるかということだけに考えが行ってしまって、自分のメリットより会社のメリットを考えてしまうところがあると思います。

人や物がもっとなめらかに移動できる社会に

この事業が広がったら世の中がどのように変わると思いますか?また、世の中にどんなメリットがあると思いますか?

ドローン社会を僕たちは創っていきます。今は鳥しか飛んでいない上空数百メートルの空間をドローンが飛び交うようになって、人類の経済圏や生活圏が、既存の地上2次元空間から、空を含めた3次元空間へと拡張していく世界が広がる。

そこで人や物が移動して、どんどんコストと時間がかからない社会ができるようになっていく。そうなると人や物がもっとなめらかに移動できる社会になると思っていますね。直近ですと買い物弱者の問題など、物流の社会課題がドローンによって解決できると考えています。

誰もが選択肢は無限大

最後に若手の方にメッセージをお願いします

選択肢の視座を一つ上げることは大事です。どの企業に入るのかしか見えていない人はもう一段視座を上げたら、今よりずっと選択肢が広がると思います。誰もが選択肢は無限大なはずです。なのに狭い視野にだけ囚われているのはすごくもったいない。僕は2年生の時お笑い芸人をやっていたのですが(笑)、お笑い芸人も起業家もなんでもありなんだよ、その中で就職もありだよという考え方ができたらもっと有意義な選択ができるのかなと思います。

今回の取材から、グローバルに広がるドローン社会の実現にsora:shareが提供するサービス価値の大きさを知った。福岡からグローバルに挑戦し、ゼロベースで世の中の新しい価値を提供する清水さんの今後の活躍を応援していきたい。明星和楽では、福岡の未来のスタートアップを牽引する若手世代を今後も特集していく。